ゆとり社員ちゃん、転職する。~エピソード0~

ゆとり社員ちゃんシリーズ
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ゆとり世代──
それは、2002年に始まった「ゆとり教育」を受けた世代である。半ドンを知らず、詰め込み教育を回避し、のびのびと育った若者たちだ。

 

「これだからゆとり世代は!」
本日何度目の怒号だろう。営業部部長のダミ声が聞こえてくるたび、体がビクッとなる。
好きでゆとり世代に生まれたわけじゃない、と心の中で下唇を突き出して、湯島ことりは声のした方を盗み見た。怒鳴られているのは同期入社の青木さんだ。営業部に配属された4人のうち、生き残った最後の一人でもある。

──うわ、泣いてる。あーあ、かわいそうに……

明日は我が身。ことりは肩にかけたブランケットを引き寄せると、猫背を一層丸めてモニターに身を隠した。

 

ここは都内某所にある小さな広告代理店、C&Mファースト。国内最大手である雷報堂の広告マンが独立して立ち上げた、新進気鋭のベンチャーだ。
デザイン専門学校を卒業したことりがこの会社に就職したのは2年前のこと。「顧客(C・クラインアント)の心(M・マインド)を第一に考えます!」という理念に心ひかれたから……というのは建前で、実際は就職活動に苦戦したから。30社以上受けて箸にも棒にも掛からなかった自分を、拾ってくれたのはこの会社だけだった。
アパレル業界の求人情報を掲載するフリーペーパーが主力商品で、制作部に所属することりはその紙面デザインの一端を担っている。営業の考えたコピーと、営業が撮ってきた写真と、営業がヒアリングしてきた求人内容を、決められたフォーマットのなかに収める仕事だ。
給料は悪くない。拾ってもらった恩もある。

だけど。

「はぁぁぁぁぁ……」
翌日から来なくなった青木さんの代わりに給湯室の掃除当番を押し付けられたことりは、ドス黒いため息を吐いた。

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