電子書籍の文字数は2万文字がベスト!

この記事はPREP法を元に書きます。
だから真っ先に結論を提示しますね。
電子書籍は、2万文字がベストです!
その理由は2つあります。
1つは、ちょうど通勤時間内に読み終わる長さだから。
もう1つは、POD(プリント・オン・デマンド)で購入しやすいからです。
あくまで読者ファーストで考えたとき、ベストな文字数が2万文字なんですね。













それではさっそく、PREP法に基づいて
R(理由)と E(実例)を書いていきます!
なお、PREP法は電子書籍執筆においてもとても有効な文章構成法です。
PREP法ってなに? どうやって書くの? という方は、以下の記事を参考にしてくださいね。




理由1.通勤時間に読み終わる長さだから
この章では、統計や統計を基にした記事を参考にしながら、電子書籍のベストな文字数をあれこれ推計しています。


数字は面倒くさい!
結論だけ知りたいわ!
という方は、理由2まで飛んでくださいね。
電子書籍は通勤中に読まれる
いつ・どこで電子書籍を読むか?
答えは、「通勤電車・バスの中」です。
このような記事も見かけました↓↓↓















電子書籍を出版したい方に
役立つ情報満載のサイトなので、
ブクマ推奨ですよ~!
もちろん、電子書籍にも「しおり機能」はあります。
端末をスリープにしたり、アプリを閉じたりするだけで自動的に現在のページを記憶してくれます。アプリを開けば、すぐに続きから読めて便利です。紙の本にしおりを挟むのと同じ感覚ですね。
しかし私は、電子書籍ユーザにはできるだけしおり機能を使わせたくないのです。
しおり機能を使うと読了率は下がる!?
途中でしおりを挟ませると、読了率が下がると私は考えます。













ソースはありません。
あくまで私の所感
というか経験です!
紙の本なら、しおりが挟まれた状態の本がカバンの中にあるわけです。読み終わらないといつまでもカバンの中にいます。挟まれっぱなしのしおりが「おーい、続きを読んで!」と訴えかけてきます。
でも、電子書籍は違う。
スマホの外見からは、読みかけの本があるということはわかりません。しかも、スマホには暇つぶしができるアプリがいっぱいです。音楽を聴いたり、ゲームをしたり、ネットサーフィンをしたり。
しおりを挟んだ読者が、その続きを読んでくれるのはいつになるかわかりません。
帰りの電車? 翌日の朝? 週末を挟んだら忘れ去られてしまうかも……
せっかく書いた本は、最後まで読んで欲しいですよね。作者として悲しいです。
それに最後まで読み終わらないと、レビューを書いたり感想をリアルやSNSでシェアしたりといった行動にはつながりません。
一気に最後まで読み切ってもらうためにも、「通勤時間内」で読み終わる長さで電子書籍を書くのがベストです!
日本人の読書速度は平均600文字/1分
では、通勤時間で読み終わる長さとはいったい何文字なのでしょうか。
それを知るためには、まずは読書スピードを知る必要があります。
日本人の平均読書速度については、速読に関するさまざまな協会のホームページで知ることができました。
日本語の場合、小学生300文字/分、中学生500文字/分、高校生〜一般600文字/分位とされています。
日本人の3人に2人は、読書スピードは400文字~800文字/分の範囲にあることが分かっています。平均読書スピードは毎分600文字で、(以下略)
SP速読学院HPより引用
つまり、日本人の平均読書速度は1分あたり約600文字といえそうです。
こちらのサイトでは、自分の読書スピードを計測することもできます。↓↓↓















ちなみに私は952文字/分でした。
読書速度はかってみた。これ、朝と夜では差が開きそう。
あなたの読書速度は 952文字/分 です。一分の計測で、一生が変わる!?読書速度ハカルくん https://t.co/Vl7ky7zGyY— 椥辻夕子@電子書籍作家ゆとり社員ちゃん1~16好評発売中 (@nagitsuji_yuuko) December 11, 2018
大都市圏の社会人の通勤時間はだいたい35分くらい
勘のいい人はおわかりかもしれませんが、通勤時間で読み終わる長さを
読書速度600文字/1分 × 通勤時間の平均
という方法で計算しようとしています。
ただ、難しいのがこの通勤時間。都市部と地方では異なりますし、一人暮らしか家庭があるかによっても居住エリアは違ってきます。
あくまで参考値として、総務省統計局が5年に1回行っている「平成25年住宅・土地統計調査」を元に導き出してみることにします。
中位数をみると,中京大都市圏は 27.5 分と全国(27.6 分)と同程度となっているが,関東大都市圏及び近畿大都市圏はそれぞれ 44.9 分,35.0 分と共に全国を上回っている。
総務省統計局HPより
日本の住宅・土地-平成25年住宅・土地統計調査の解説- 結果の解説
4-3 通勤時間の状況
中京・関東・近畿でバラつきはありますが、ここでは特に通勤に時間のかかる関東に注目します。通勤時間が長い=暇つぶしに電子書籍を読む人が多くなるだろう、という推測からです。













関東以外の方を
無視しているわけではないので
あしからず……
さて、この統計によれば、関東大都市圏の通勤時間は約50分とのこと。ただしこれは徒歩を含むドア・トゥ・ドアの時間です。総務省統計局の用語集でこのように定義されています。
通勤時間
徒歩やバス・鉄道などふだん利用している交通機関による自宅から勤め先までの通常の通勤所要時間(片道)。総務省統計局HP用語集より引用
自宅から駅まで、駅から勤め先まで徒歩で移動している間は、電子書籍を読みませんよね。













歩きスマホは危険です!
自宅から最寄り駅までの距離については、都市部と地方で大きく差があります。そこで、同じく総務省統計局の統計に基づいて書かれた、東京都の「最寄りの駅からの距離」を推計した以下の記事を参考にしてみましょう。
東京都はたくさんの駅があることもあり、駅から1000m以内。徒歩12.5分圏内の人がほとんどです。
暮らしっく不動産HPより引用
大都市部はどこも似たような状況だと仮定すれば、最寄り駅から12分程度は歩くということになるでしょう。













私が東京に住んでいたときも、
急ぎ足でそれくらいでした。
本来ならば会社までの徒歩分数も加味しなければなりませんが、具体的な統計や記事が見つからなかったので諦めました。
そこで、「住宅街にある自宅よりは、会社は駅から近い立地にあるんじゃね?」という推測から、半分の6分という数字を用いることとします。
なんやかんやで、
通勤時間約50分-(最寄り駅まで徒歩約12分+駅から会社まで徒歩約6分)
=電車やバスに乗っている時間は約32分
という推計が導き出されました!
以上より、
1分あたりの読書速度600文字×電車やバスに乗っている時間約32分
= 約19,200文字
が、電子書籍の文字数として理想的だという結論に至ります。
統計や計算式をこねくりまわしてみましたが……
とにかく電子書籍は2万文字がベストという主張を裏付けられました。













正直ホッとした
理由2.PODで購入しやすいから
PODとは、プリント・オンデマンド(Print On Demand)のこと。
オンデマンド印刷を利用することで、電子書籍を1冊から紙の本として購入できるサービスのことです。
印刷製本コスト・在庫リスク・流通コストをかけずに全世界へ紙の本を届けられるサービスで、個人による電子書籍出版においても紙の本を手軽に出版できます。
読者にとっても、気に入ったコンテンツを紙の本で手元に残せたり、電子書籍ユーザではない家族や友人に気に入った本を渡せたりといったメリットがあります。
PODで1,000円以下、高くても1,500円以下を目指そう
電子書籍のベストな文字数は2万文字である、と私が主張するもうひとつの理由は、PODの販売価格を1,000円以下、高くても1,500円以下にしたいからです。
これは、かつて資格学習本の出版社に勤めていたときの経験に基づいています。
とあるコンテンツを改訂するにあたって、安い用紙に変えることで値段を安くしました。
1,100円の本を1,000円に価格を下げても、売上はあまり変わりませんでした。
でも、1,000円の本を980円にしたら、売上がグッと上がったんです。













価格とか改訂の背景とか時期的なものとか
いろいろぼやかしているので、
辻褄があっていなくても見逃してください
つまり、本は「1,000円を超えると購入されにくくなる」傾向があるのです。
もちろん、これはあくまで私個人の所感です。ベストセラーや著名人による本はこの限りではありませんし、絶版本や希少本、専門書や学術書・技術書はどれだけ高くても購入されます。
もうひとつ基準としたいのが、Amazonの絞り込み項目です。
Amazonの絞り込み機能のひとつに「価格」というカテゴリがありますが、この最低値は「0ー1500円」となっています。安価で良質な本を購入したいと考える人も多いでしょうから、この絞り込みのなかに入っておきたいわけです。
紙の本と電子書籍それぞれについて、ランキング上位の価格帯を調べた記事も見つけました↓↓↓
総合ランキングでは、紙の本の価格帯は900円弱から2,000円の幅に収まってます。
(中略)
電子書籍の価格帯は(特に割引率が低い「正義の法」を除いて)600円から1200円の幅に収まっています。電子書籍の窓より
2016年の記事なので最近のトレンドとはいえないかもしれませんが、それでも「電子書籍は紙の本の6割程度の価格帯、600~1200円のものが売れている」というのはひとつの指標になりますね。
電子書籍を紙の本として購入するPODは、その間の価格帯を狙って行くべきだと私は考えます。
株式会社まんがびと様から出版した椥辻夕子のPOD本を分析!
PODの売価はページ数によって変動します。
そこで、2万文字の電子書籍をPODとして購入した場合、
- 1ページあたりどれくらいの文字数か
- 販売価格はどれくらいか
を調べてみましょう。
私、椥辻夕子は株式会社まんがびと様から約70本の電子書籍を発売しました。
その多くはPODサービスを利用して紙の本として購入可能です。
例えば、代表作である『ゆとり社員ちゃん』シリーズのこちらの本。
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ゆとり社員ちゃんの断る敬語 キッパリ断る方程式とやんわり断る方程式 (30分で読めるシリーズ) 新品価格 |
ちなみに、この本の文字数は約27,000文字。小説形式なので文字数はやや多めになっています。タテ書きで作られており、POD版だと132ページとなっています。
約27,000文字÷132ページ=1ページあたり204文字 ということがわかります。
一般的に、文庫本の1ページあたりの最大文字数は600文字から古いもので800文字程度とされています。比較するとかなりスカスカですね。
シリーズ1作目である『ゆとり社員ちゃん、会話術を学ぶ。1 「傾聴力」が雑談スキルUPのカギ!』のPOD見本を見てみましょう。
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ゆとり社員ちゃん、会話術を学ぶ。1 「傾聴力」が雑談スキルUPのカギ!20分で読めるシリーズ 新品価格 |
(撮影:株式会社まんがびとの平田社長)
スカスカ具合がおわかりいただけることでしょう。「」でくくられた会話文の前後に、不要な改行ができてしまっているのが主な原因です。
なお、これは著者である私や版元である株式会社まんがびと様が意図した紙面デザインではありません。ePUB形式で納品した電子書籍をPOD化する際、自動的にこのようにデザインされてしまうとのことです(2019年2月現在)。
余談:PDF版で納品するという手もある
現在、電子書籍はePUB形式またはPDF形式が主流のようです。
ePUB形式は文字のリフロー機能が便利ですが、裏を返せば作者が意図したレイアウトで固定されないというデメリットも。
任意のレイアウトで行間や文字数を調節したPDF版で納品すれば、POD化したときにページ数がやたら増える心配はありません。その分、売価を低く抑えられる可能性も出てきます。
電子書籍としてはePUB形式が読者ニーズに合っていますが、POD販売を主軸に考えるなら、PDF版での納品も視野に入れるとよいかもしれませんね。
POD売価設定の基本的な考え方
Amazonや楽天ブックスのプリント・オンデマンド取次社であるNext Publishing 出版サービスでは、価格の設定について次のように提示しています。
アマゾンが定めている印刷費(モノクロページ数×2.5円+カラーページ数×6.9円+180円)でのご提供が可能です。また、販売手数料は販売価格の40%と出版社への卸価格と同等条件で個人の方も利用いただけます。販売価格は、「印刷費」+「販売手数料(販売価格×40%)」を上回る価格であれば、1円単位で自由に設定が可能です。
全ページがモノクロの本を、価格1,000円でPODとして販売する場合、最大ページ数は次のように計算されます。なお、手取り額を15%の150円に設定しています。
(販売価格1,000円-販売手数料400円-180円-手取り150円)÷モノクロ2.5円=約108ページ
前章で挙げた椥辻夕子著作のPODの実績に基づいて、1ページあたり約200文字が収録されると仮定するなら、
1ページあたり約200文字×約108ページ=約21,600文字
ということになります。
ここでもまた、電子書籍は2万文字がベストという主張を裏付けることができました。













正直、またまたホッとした
電子書籍は2万文字を目安に書こう!
最初に、この記事はPREP法に基づいて書くと宣言しました。
ここまで、P(要点)=電子書籍は2万文字がベスト を主張するために、
R(理由)1=通勤時間に読み終わる長さだから
E(詳細)1=1分間の読書速度および通勤時間の統計
R(理由)2=PODで購入しやすいから
E(詳細)2=椥辻夕子著作の分析およびNext Publishing 出版サービスの価格設定
というステップを踏んできました。客観的にも理解しやすい理由をRに、ソースがきちんとした数字や統計をEにもってきたので説得力のある記事になったはずです。
PREP法は、最後にP(要点)を繰り返してしめくくることでさらに説得力を高めます。













それでは、声を大にして繰り返します。
P(要点)=電子書籍は2万文字がベスト です!
……とはいえ、私・椥辻夕子もすべての著作を2万文字前後で書けているわけではありません。
出版社様の意図で1万文字以内に収めて、コンパクト&低価格なコンテンツにしたこともあります。好き勝手自由に書かせていただける『ゆとり社員ちゃん』シリーズでは、どうがんばっても3万文字近くなってしまうことも……!
では、どのようにして電子書籍を2万文字にまとめあげればよいか?
これについては、『元編集者が教える台割のつくり方』という記事で紹介したいと思っています。ご期待ください。
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